土地境界紛争・境界問題への対応

土地境界紛争・境界問題への対応

土地境界紛争・境界問題は多数存在しています。

・過去に作成された地図,測量の精度が高くはなかったこと,土地境界を厳密に設定する必要性が余り認識されなかったこと,長い期間に当事者間での認識,行動により発生し,土地という客観的事実と実態が変化し齟齬が生じたこと等で土地の境界紛争が生じる一因と考えられます(※2参照)。

 

土地境界紛争の解決方法

(1)当事者間での任意の交渉,合意

(2)筆界特定制度の利用

(3)裁判の利用

(4)その他(ADR)

筆界特定制度とは

・筆界特定制度(詳細は,法務省HP参照:以下同HPより一部引用)

 土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて,筆界 特定登記官が,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,現地における土地 の筆界の位置を特定する制度です。ある土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を,現地において特定することです。新たに筆界を決めるものではなく,調査の上,登記された際に定められたもともとの筆界を,筆界特定登記官が明らかにすることです。筆界調査委員という専門家が,これを補助する法務局職員とともに,土地の実地調査や測量などさまざまな調査を行った上,筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し,筆界特定登記官が,その意見を踏まえて,筆界を特定します。

・不動産登記法123条2号「一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。」

筆界特定制度の注意点

①筆界特定制度は,土地の所有権がどこまであるのかを特定することを目的とするものではありません。
②筆界特定の結果に納得することができないときは,後から裁判(=境界確定訴訟等)で争うこともできます。

・筆界特定とは,新たに筆界を決めることではありません。実地調査や測量を含む様々な調査を行った上,もともとあった筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。

・筆界特定制度を活用することによって,公的な判断として筆界を明らかにできるため,隣人同士で裁判をしなくても筆界をめぐる問題の解決を図ることができます。

・境界トラブルが発生していなくても,次のような場合,筆界特定制度を利用できます。

①筆界確認作業の際,隣接土地所有者の立会協力が得られない。

②隣接土地所有者の行方が分からない。

③地籍調査による「筆界未定地」の解消をしたい。

④筆界が不明,筆界に争いがある。      etc

 

土地境界に関する裁判(訴訟)の種類

①境界確定訴訟

・形式的形成訴訟と言われ,裁判所は当事者の主張する境界線に拘束されることなく,審理の結果正当と判断するところ(公法上の客観的な存在であり,私人である当事者が勝手には決められないし,裁判所も客観的に確認,判断しなればならなない)を境界として確定しなければならないもの。

・裁判所は,請求棄却判決ができず、必ず確定しなければならず(証拠から客観的な境界が発見できなくても),原告・被告になることができるのは当該境界の隣接地所有者だけ(当事者適格)という特殊性があります。

・訴訟の結果,境界がどこと確定されたかにかかわらず,一方当事者から占有の事実から取得時効(民法162条)の主張がなされ,認められれば真実の境界とは異なる所有権の範囲(ただし,時効取得した部分は,分筆し所有権に関する登記が必要となる)が確認,定められることになる場合(境界確定訴訟では根本的な解決にはならない)もあります。

②(土地)所有権確認訴訟

 

土地境界問題に関連するADR(裁判外紛争解決手続)

・土地境界問題を訴訟(裁判)で解決するには非常に多くの労力,費用及び時間等がかかります。しかも,当事者にとって望まない結果になる事もあり得ます(土地境界は公法上のものであるため,通常の民事訴訟でなされる和解(当事者同士の合意で自由に決定する)はできません。)。

・当事者にとっては,どこが境界(原始筆界※7参照)であるかを確認することも重要ですが,現在占有し利用(使用,収益)している土地がそのまま認めてもらえる,認めてもらえないにしても隣接地所有者との間である程度以上の納得できる解決ができることにも相当なメリットがあります。

・そのため,裁判ではなく土地境界及び所有権等の問題を総合的に検討,考慮し話し合いで解決する方法としてADRが利用される場合もあります(ADR自体は,境界問題以外でも広く一般化しています。)。

・ADRとして,裁判所で行われる民事調停(あくまで歩み寄りによる解決を目指す話し合いの場であり,闘い合う裁判ではありません)やADR促進法に基づき、法務大臣の認証を得た認証紛争解決機関によるものなどがあります。

 

※土地境界に関するADRとしては,土地家屋調査士会が運営する「境界問題相談センター」があります。

・境界問題相談センターでは、筆界,境界の専門家である土地家屋調査士が境界にかかわる民事紛争の解決のために土地家屋調査士と弁護士が調停人として関与し,「ADR認定土地家屋調査士」(特別研修を受講し考査に合格した土地家屋調査士(土地家屋調査士法第3条第1項第7号))が弁護士との共同受任により,当事者の代理人になり活動することが できます。

※1「境界」(きょうかい)

筆界と同じ意味で用いられるほか,所有権の範囲を画する(=「所有権界」(しゅゆうけんかい)という意味で用いられることがあり,その場合には,筆界とは異なる概念となります。
筆界は所有権の範囲と一致することが多いですが,一致しないこともあります。

※2 「筆界」(ひっかい)

一筆毎に付した地番と地番の境のことです。土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり,所有者同士の合意などによって変更することはできません。

不動産登記法123条1号

「表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」

筆界と所有権界(後記)は本来一致しているはずです。しかし,①測量・作図技術の拙劣,縄延び等による不一致(原発的不一致)測量錯誤による過大又は過小売却,一筆地の一部売却により不一致が生じたり,隣接地所有者間等での和解等により所有権界を移動させ,それ以外はそのままにしている場合等による不一致等(後発的不一致)により境界が不一致となります。これらを,当事者(境界に隣接する土地の所有者)が認識している場合,全く知らず認識していない場合(代替わり,完全な勘違い,無意識等)など様々な状況があり得ます。

※3 「所有権界」(しょゆうけんかい)

所有権の範囲を示す線(私法上の境界)のこと。所有者間の合意等により決定,変更することができますが,そのままではあくまで当事者限りのものです。したがって,公法的に全く問題ない状況にするためには分筆及び所有権移転,その前提として正確な測量及び筆界の確認が必要となります。

※4 「占有界」(せんゆうかい)

当事者が占有(事実上)している部分の境。

※5 筆界特定の手続きに要する費用

①申請手数料(筆界特定の申請に要する手数料)

②手続き費用(筆界特定の手続きにおける測量に要する費用)

③代理人に委任した場合等の費用(代理人の報酬、私的に鑑定する場合の費用など)

筆界をさらに詳しく

・筆界とは,公法上の境界のことで,明治時代の地租改正(所有権の確定に関しては豊臣秀頼の太閤検地によるとの見解もありまずが,太閤検地は耕作権に関するものであり正確ではない等の議論もあります。)等により創設された境界線(原始筆界とも言われる))。
・公法上の境界の4種類として,①地租改正時に定められたもの(原始筆界),②法令に基づく区画整理,土地改良等によるもの(再編成筆界),③分筆等個人(当事者)の意思に基づき作出されたもの(後発的創設筆界),④国土調査事業に伴う地籍調査によって①の原始筆界を確認し決定した筆界があると言われています。

 

あすか総合法律事務所では土地の境界問題をはじめ不動産に関する事案を扱っています。

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